小児矯正


 第一期混合歯列期の矯正治療について

混合歯列期(乳歯と永久歯が混在している)のお子様においては、とりはずしのできる装置を主として使って、あごの骨の成長促進―抑制を行います。これを咬合育成と言います。この歯並びを悪くしない予防的矯正をすることにより、永久歯列の歯並びが悪くなってから、歯に固定性のワイヤーをつけて治す治療よりも、高い確率で「永久歯を抜かない矯正」「治療期間が短い痛みの少ない矯正」を達成することができます。

 使用矯正装置

 1) 床拡大装置(シュワルツ)

1週間に1回中央部の拡大ねじを90度回して歯列の緩除な拡大を図る。違和感が少なく使いやすい。拡大期間3~4か月、その後はリテーナーとして使用する。

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6ヵ月後

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 2)上顎急速拡大装置(RPE)

1日に2~3回中央部の拡大ねじを回して上顎の正中縫合部の分離により歯列の拡大を図る。拡大期間は1カ月、その後はより違和感の少ない床拡大装置(クワッドヘリックス、バイへリックス)に変更する。20代前半まで適応可能。

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上記写真は永久歯列症例で、上左)装着時、上右)装着後1週間上顎正中部にスペースができています。左)1ヵ月後にクワッドヘリックスに変更しました。

 

3)バイヘリックス、クワッドヘリックス (BH,QH)

固定式の拡大装置。ワイアーにつけた渦に、ばね力を蓄えて歯列を緩除的に拡大する。
月に1回はずしてアクティブ調整後再装着。治療期間6か月~12か月。保持装置としても用いることがあります。

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上左)急速拡大装置装着後 上右)3ヶ月でクワッドヘリクスに変更し 左)6ヵ月後の状態です。

 

4)リンガルアーチ(LA)

固定式の保定装置。補助弾線をろう着して前歯の前方移動や、捻転歯、転位歯の修正に利用される。

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上段左)上顎前歯の捻転、右)改善 中段左)上顎前歯の前方移動、右)移動完了
下段左)下顎前歯の前方移動 右)移動完了

5)咬合斜面板―咬合挙上板

取り外せる装置。咬み合わせが深い症例や下顎が奥に移動して出っ歯(上顎前突)になっている症例に用いて、咬み合わせを挙上したり、下顎を前方移動させる装置です。

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上段)拡大装置付き斜面板、下段)装着後1年下顎の前方移動が確認出来る。

6)リップバンパー

取り外しできる大臼歯遠心移動装置。唇の力を用いて大臼歯の位置を奥に移動させる装置です。

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上段)装着時 下段)装着後6ヶ月、下顎大臼歯の遠心移動が認められる。

7)ペンデュラム、ペンデックス

上顎の床タイプ固定式大臼歯遠心移動装置。床と連結したバネの力により歯を遠心に移動させる。違和感が少なく使いやすい。中央部に拡大ねじがあるものをペンデックスという。

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上左)装着時 上右)2ヵ月後大臼歯の遠心移動を確認 下)除去して2ヵ月後

 

 8)フェイシャルマスク+上顎骨前方けん引装置

 

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左図がフェイシャルマスクの装着の様子です。

家族歴のある上顎骨の劣成長による受け口症例に適応します。上顎に床タイプやアーチタイプ固定式の前方けん引装置をつけてフェイシャルマスクからエラスティックで前下方にけん引する。成長期にのみ適応可能で1日16時間以上の着用が必要です。以下に当院の症例を展示します。
ⅰ)上左)口周囲のエラスティック牽引の様子。上右)上顎口腔内に装着されたLA式前方けん引装置。下左)装着直後。下右)3ヵ月後の状態。

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ⅱ)

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左)口周囲とエラスティックの状態です。下左)術前 下右)術後

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ⅲ)床タイプの前方けん引装置
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9)ハーブスト装置、ジャスパージャンパー装置

下顎骨の劣成長による上顎前突症例(出っ歯症例)に適応します。上下顎固定式装置でシリンダーやバネにより下顎を前方に押し出し移動させる装置。思春期成長期以降にも有効な装置です。
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10)BJA

上下に入れる取り外せる装置。咬み合わせが浅い症例で下顎が奥に移動して出歯(上顎前突)になっている症例に用いて、下顎を前方移動させる装置。拡大ねじがついて拡大に対応している。下顎誘導装置が前歯部についていてハビットブレーカーも兼ねることができます。

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11)ダイナミック アプライアンス

上下に入れる取り外せる装置。咬み合わせが浅い症例で下顎が奥に移動して出っ歯(上顎前突)になっている症例に用いて、下顎を前方移動させる装置。下顎誘導装置が左右臼歯部についていて審美的にBJAより優れている。

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12)舌習癖除去装置(ハビットブレーカー)

舌突出癖、舌翻ろう癖のある症例に対して、舌の動きを抑制することで歯列の改善を図ります。上図)術前、下図)術後です。

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